時効
監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
消滅時効の起算点
消滅時効には、損害及び加害者を「知った時」から算定されるものがあります。医療事件の場合には、患者や遺族は医学的知識や診療に関する情報を有していないため、明確な過誤がある事案でも状況を理解していないことが多いです。したがって、患者や遺族がある程度内容を理解するまでは消滅時効を進行させるべきではありません。一般的にはカルテ入手時以降に消滅時効が進行すると考えるべきですし、事案によってはカルテを入手しても消滅時効を進行させるべき状況ではないこともあります。裁判例(大阪高等裁判所平成17年9月13日判時1917号51頁)では、証拠保全でカルテを入手してから「相当な検討期間を経過した時」が時効の起算点であると判断されています。
ただし、医療記録が散逸したり、当事者が死亡したりするリスクがあるので、患者や遺族としては特に理由がない場合には少なくともカルテの収集は速やかに行っておくべきです。
民法改正
2020年4月1日から消滅時効に関するルールが変更されています。2017年4月1日以降の事件では、基本的に消滅時効の期間は5年と考えても良いですが、具体的な時効期間は弁護士に相談して確認して下さい。
不法行為 | 債務不履行 | |
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人身損害消滅時効 | 知った時から5年(旧民法3年)不法行為時から20年で消滅時効(旧民法は除斥期間)新民法724条の2 | 知った時から5年(旧民法は主観的起算点なし)権利行使可能時から20年(旧民法10年)新民法166条、167条 |
経過規定 | 施行日前に3年の時効が完成していたら旧法適用施行日以後に3年の期間が経過するときは5年 | 施行日(2020年4月1日)より前に債権が発生した場合に旧法適用施行日以後に債権が発生した場合に新法適用 |
この記事の執筆弁護士
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大阪弁護士会所属
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保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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