医道審議会

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

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医道審議会は医師に対する行政処分を事実上決めている機関です。医師に対する行政処分には①戒告②三年以内の医業の停止③免許の取消しの3種類があります(医師法7条1項)。

現在の医道審議会は基本的に刑事事件で有罪になった事件について行政処分を下しています。そして、国家権力は謙抑的に行使するべきであるため、民事事件よりも刑事処分の方が遥かに慎重に運用されています。したがって、民事で金銭の賠償請求が認められる事案のうち一部のみに対して刑事処分と行政処分が下されているのが現状です。

このように、行政処分が刑事処分の後追いになっていることについては、再発防止やシステムエラーに対応できない等の問題が指摘されています(日本医師会医療事故における責任問題検討委員会「医療事故による死亡に対する責任のあり方について」3~4頁)。

素朴に考えても、業務停止や免許の取消しについては刑事処分よりも重い意味を持つ場合もあると思いますが、戒告が刑事処分より重いとは考えられません。刑事責任が問われていないため戒告になっていないが、本来は戒告(再教育や再発防止が伴うことが望ましい)にするべき事案は相当数あると考えられます。

また、行政処分が刑事処分の後追いになっていると、患者側が医師免許を停止して欲しいと考えた場合には刑事告訴等を行うことになるため、刑事事件を誘発している可能性も十分にあります。当職は病院側よりも患者側の事件を多く扱う立場ですが、医師のミスに対して刑事処分が相当であるのは、隠蔽をしていたり、異常なリピーターの事案に限られるべきであると考えています。過剰な刑事処分は萎縮医療や隠蔽につながり、患者の利益も害されるからです。また、刑事処分の判断過程では多数の専門医の意見書を取得するため一定の専門性は担保されていますが、起訴されるかどうかについて偶発的な要素が介在している疑いがあります(日本医師会医療事故における責任問題検討委員会「医療事故による死亡に対する責任のあり方について」7~8頁参照)。被害者には民事事件で十分に補償し、行政処分で医療安全を確保する代わりに、刑事責任は問われないという形があってもよいのではないかと思います。

実際に、国も行政処分の活用について検討しているようです。医道審議会医道分科会「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」平成27年9月30日改正では「国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなかった医療過誤についても、医療を提供する体制や行為時点における医療の水準などに照らして、明白な注意義務違反が認められる場合などについては、処分の対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法やその改善方策について、今後早急に検討を加えることとする。」と記載されています。

また、行政処分を十分に活用するためには、誰が判断し、どのような契機で調査を開始するのかという点が重要です。処分の妥当性を担保するためには十分な専門性を持った人が判断過程に関わる必要があります。また、医療事故調査制度のように病院側のみの判断で報告しないことが許容される制度は形骸化することが明らかになっています。例えば、医師会を強制加入にして懲戒制度を拡充したり、医師の資格を有する行政官が調査を独自に行うような抜本的な制度改革を行うことを期待しています。

この記事の執筆弁護士

大阪法律事務所 副所長 弁護士 髙橋 旦長
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 副所長弁護士 髙橋 旦長
大阪弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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