証拠保全
監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
証拠保全とは
証拠保全とは訴訟における証拠調べの前に、証拠調べを行って保全する手続のことです。具体的には、執行官が病院に証拠保全の決定書の正本を送達してから30分~1時間30分後に、裁判官が病院に行ってカルテ等を閲覧して記録化します。「白い巨塔」の証拠保全のシーンを思い浮かべる方もおられるかもしれません。
医療機関が記録を任意に提示しない場合には、裁判所が提示命令を発令することがあります。提示命令に違反した場合には、検証物の性状や性状により証明すべき事実に関する申立人の主張が真実であると見做されることがあります。
患者側として証拠保全を行うべき事件
手術動画の内容が問題になる事案では証拠保全の必要性は高いです。手術の手技ミスについては手術動画が決定的な証拠になる可能性がありますが、手術動画を任意に開示しない病院もあるからです。
また、紙カルテの病院では、事後的な書き込みが行われる危険性がありますし、記録の一部が破棄されるケースも実際にあります。紙カルテの病院の事案は類型的に保全の必要性が高いと考えられます。
その他にも、CTGの印刷物等、事案の帰趨を決するような証拠が改竄又は隠匿される危険性があると判断される場合には証拠保全を行うことになります。
証拠保全の期日の対応
(1)患者側の対応
申立人本人は期日に立ち会うことができます。ただし、裁判所が行う手続ですので、裁判所の仕事に支障をきたさないように冷静に対応して下さい。弁護士は、裁判官に対して、証拠の所在等に関する意見を伝えて必要な証拠を取得できるように協力します。
(2)病院側の対応
病院側としては、突然裁判官や弁護士が病院に来るので慌ててしまうこともあると思いますが、可能な限り冷静に対応して下さい。小規模なクリニックでは難しいですが、医師本人が対応すると感情的になってしまうことがあるので、事務や看護師の責任ある地位の方が対応することも合理的です。また、裁判官が来る前に修正履歴も含めたカルテの印刷物と画像データのCDを用意しておくと、速やかに手続が終わって業務に対する支障を減らすことができます。他にも証拠保全に対する対応のコツはありますので、医療事件の経験の多い弁護士に相談してみて下さい。
この記事の執筆弁護士
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大阪弁護士会所属
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保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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