前歴とは?前歴は消せるのか、回避するには
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
前科という言葉は、皆さんお聞きになったことがあると思いますが、前歴という言葉はいかがでしょうか?これらの言葉は、似て非なるものです。以下、前科と前歴の違いは何か?前科を付けないようにするにはどうすればよいか?ご説明します。
目次
前歴とは
実は、前科・前歴という言葉は、法律等によって定義が定められているわけではありません。
一般的に、前歴とは、有罪判決には至らない犯罪歴のことです。例えば、ある罪で逮捕されてしまった場合に、検察官が不起訴処分とすれば、前歴のみが残り、前科は付かないということになります。、刑法27条では、執行猶予付き判決であれば執行猶予期間を無事経過したときに、刑の言い渡しは効力を失うと定められています。刑の言い渡しが効力を失うので、期間経過によって前科の効力が消滅します。
前科と前歴の違い
前歴に対し、前科は、有罪判決を受けた経歴のことです。懲役刑や禁錮刑のみならず、罰金刑であっても、前科になることは変わりありません。
また、実刑か執行猶予付き判決かにも関わらず、前科は付くことになります。
前科については、以下の記事で詳しく解説されておりますので、ご確認ください。
前歴がつくことによるデメリット
前歴があるとどんな不利益を受けることがあるの?と思われた方もおられると思います。前歴が存在しようと国家資格を取得することができないなどの法的な不利益をうけることはありません。
ローンを組めなくなるといったこともありませんし、社会生活上は、特に不利益を受ける場面は考えにくいです。
ただ、以下のようなことが考えられます。
インターネット上に記録が残る可能性がある
逮捕されたというようなニュースが報道された場合、インターネット上にはそのニュースの記事は残り続けてしまいますので、そこから前歴があることが明らかになることが考えられます。ご自身でサイトの運営者に削除依頼をすることもできますが、報道の自由や表現の自由を盾に認めてもらえないことも多いです。インターネット上に存在するニュース記事によって、どのような不利益が社会生活上生じているのかといったことを適切に説明する必要がありますので、弁護士に削除依頼をされたほうが良いと思います。
再犯の際に不利になる
前歴は警察、検察、本籍地の市区町村で管理されており記録が残り続けます。同種の前歴の場合には、検察官が終局処分の判断をする(起訴・不起訴の判断のことです。)際、起訴する方向に傾く一要素となる可能性が考えられます。
前歴は調べられるか
前歴については、本人であっても、警察庁、検察庁、市区町村等へ照会をかけて調べることはできません。ただ、上述しました通り、インターネット上に残る逮捕報道のニュース記事等から、前歴の存在が明らかになる可能性はあります。
前歴は消せるか
前歴については、本人が死亡するまで消えることはありません。
一方、前科については、刑法で定められた期間を経過した場合には、刑の言い渡しが失効されます。前科自体が消えるわけではありませんが、国家資格などの取得制限についてはなくなります。
なお、犯罪人名簿と刑の言い渡しの失効についての詳細は以下のページに記載がありますので、そちらをご覧ください。
前歴は履歴書に書く必要があるのか
前科・前歴について、履歴書の賞罰欄に記載する義務があるのか?記載しなければ、経歴詐称になるのか?という疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。上述しましたように、前科は有罪判決を受けた経歴のことであり、「罰」に当たりますので、賞罰欄に記載する必要がありますが、前歴は有罪判決には至らない犯罪歴のことであり、「罰」には当たらないので、賞罰欄に記載する義務はありませんし、経歴詐称にもなりません。
前歴があっても海外旅行はできるか
前歴があったとしても、海外旅行できなくなるというようなことはありません。
一方、旅券法13条1項2号には「死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者」にはパスポートを発給しないことができる旨が定められており、前科がある場合には、海外旅行ができない場合もあります。
前歴に留め、前科を回避するには
前科による社会生活上の影響はたくさん存在します。前科による不利益などの影響については、以下のページをご覧ください。前科ではなく、前歴に留めることの重要性は非常に高いです。前科を付けないためには、不起訴処分を目指す必要があります。というのも、検察官に起訴された場合、日本の刑事裁判での有罪率は99.9%とも言われており、無罪判決を獲得することは非常に困難だからです。
以上より、不起訴処分に向けた行動の重要性がお分かりになると思います。
前歴で留め、前科がつくことを避けるには弁護士へご相談ください
前科ではなく前歴に留めるには、早期段階から、弁護士に依頼をし、適切な対処をすることが不可欠といえます。一度起訴されてしまえば、前科を付けないようにすることは非常に困難です。不起訴処分を獲得することが最重要です。警察から呼び出しを受けている方や逮捕されてしまった方は、弁護士への早期相談をお勧めします。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)