家宅捜索とは?家宅捜索の条件やタイミング、捜索後の対応について
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
家宅捜索という言葉をニュース等でお聞きになったことがある方は多いかと思います。この記事では、どのような場合に家宅捜索が行われるのか、いつ行われるのか、どのように家宅捜索に対応するのか、などについて解説します。
目次
家宅捜索とは
家宅捜索とは、警察などの捜査機関が、犯罪の証拠収集を目的として、被疑者及びその関係者の自宅を捜索し、犯罪の証拠物を差押える手続のことをいいます。被疑者及びその関係者の自宅には、犯罪の凶器、被害品、犯行時に着用していた衣服、犯罪を行うために使用した携帯電話やパソコンなどが存在すると思われ、証拠収集手段としてよく利用されるものです。なお、「家宅捜索」という言葉は、法律に規定されているものではなく、正式には、「捜索差押え」といいます。
家宅捜索は拒否できない
家宅捜索は、捜索差押許可状に基づく強制処分であるため、拒否することはできません。家宅捜索を妨害しようとして、警察官に抵抗すると、公務執行妨害罪で現行犯逮捕される可能性もありますので、要注意です。
家宅捜索の条件
捜索差押えを行うには、捜索差押許可状を被処分者に示す必要があります(刑事訴訟法222条1項・110条)。
また、捜索差押えを行うには、「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者」の立会いが必要です(刑事訴訟法222条1項・114条2項)。
警察の捜査が始まるきっかけ
被害届が提出された
捜査機関が捜査を始めるきっかけのことを捜査の端緒といいます。捜査機関も何の理由もなく捜査をするわけではありません。被害届の提出は、捜査の端緒の典型例といえます。
通報された
被害者や目撃者などの110番通報も捜査の端緒の1つです。ひったくりにあった被害者が通報する場合などが考えられます。
告訴・告発された
刑事訴訟法242条には、「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。」と規定されています。被害届は被害の申告にすぎませんが、告訴・告発の場合には、上述したとおり、法律で書類送検が義務付けられており、念入りな捜査が行われることが予想されます。
職務質問を受けた
警察官職務執行法2条1項は、「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。」と規定しています。職務質問はあくまで任意のものであり、本来なら応じる義務はありません。
しかし、実際には拒否することは困難で、抵抗すると公務執行妨害といわれる可能性があるので、応じるのが無難な対応といえます。
家宅捜索のタイミング
本来、捜査は起訴・不起訴の処分(=終局処分)を決めるうえで行うものですから、検察官の終局処分前に行われるものです。
しかし、起訴後の公判段階においても、捜査をすることはできます。刑事訴訟法上、起訴前しか捜査をしてはならないというような規定はないからです。
そして、家宅捜索はある日突然やってきます。前もって、告知すれば証拠を隠したりする危険性があるからです。
そのため、家宅捜索を予期することは困難です。
家宅捜索の対象
捜索差押許可状には、捜索すべき場所や差し押さえるべき物、有効期限などが記載されています(刑事訴訟法219条1項)。ですので、捜索差押許可状に記載のない場所を捜索することはできませんし、勝手に差し押さえることもできません。
捜索差押許可状の内容の確認
捜索差押えをすることが出来るのは、「差し押さえるべき物…捜索すべき場所」に限定されています(刑事訴訟法219条1項)。これらは、捜索差押許可状に必ず記載されています。
ですので、捜索差押許可状に記載されている「差し押さえるべき物…捜索すべき場所」を必ず確認し、捜索差押許可状に記載のない物を差し押さえたり、捜索差押許可状に記載のない場所を捜索することがないか注意する必要があります。家宅捜索の際には、捜査官に捜索差押許可状を読み上げさせ、録音しておくことが大事です。
差し押さえられたものの返却について
刑事訴訟法123条で、「押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たないで、決定でこれを還付しなければならない。」と規定されており、終局処分を待たずして、捜査の必要がなくなった押収物は返還されます。
家宅捜索されることが多い犯罪
家宅捜索が行われることが多い犯罪として、覚せい剤や大麻などの薬物犯罪、窃盗、児童ポルノ禁止法違反などが考えられます。
家宅捜索に弁護士の立ち会いは可能か
起訴前の段階(=被疑者段階)では、弁護士には「弁護人」固有の立会権は存在しません。
しかし、刑事訴訟法114条2項には、「前項の規定による場合を除いて、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内で差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行をするときは、住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者をこれに立ち会わせなければならない。」と規定されており、住居主や看守者が弁護士を「これらの者に代わるべき者」として指定すれば、捜索差押えに立ち会うことができます。
家宅捜索での対応と弁護士ができること
弁護士ができることとしては、家宅捜索において、違法な捜査が行われていないかを確認します。例えば、家宅捜索開始前に捜索差押許可状の提示があったか、捜索差押許可状の「差し押さえるべき物」に挙げられていない物について差し押さえていないか、などの確認です。違法に証拠収集していた場合には、裁判で違法収集された証拠であるとして、無罪主張を行っていきます。
家宅捜査を受けた場合は、早期に弁護士へ相談を
家宅捜索が行われるということは、何らかの犯罪の嫌疑がかけられていることは間違いなく、犯罪の立証を裏付ける証拠が家宅捜索によって収集されている可能性が高いです。今、逮捕されていない、取調べを受けていないからといって、安心することは全くできません。刑事弁護はスピード勝負です。弁護士への早期段階でのご相談をお勧めします。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)