起訴とは?起訴までの流れや行うべきことを解説
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
日本の刑事裁判の有罪率は99.9%といわれており、起訴された場合、ほぼ確実に有罪判決を受けることになり、前科がついてしまいます。
本ページでは、刑事事件における起訴とは何か、起訴前後の手続きの流れ、起訴前後に弁護士ができることについてご説明いたします。
目次
刑事事件における起訴とその種類
起訴とは、公訴の提起、すなわち、検察官が裁判所に起訴状を提出し、被疑者を裁判によって処罰するよう求めることをいいます。
検察官の起訴によって、事件が裁判所に係属し、刑事裁判が始まります。
起訴には、逮捕・勾留され身柄を拘束されたまま行われる通常の起訴のほか、在宅起訴と略式起訴があります。
通常の起訴
被疑者が逮捕や勾留により身柄を拘束されたまま起訴されることをいいます。
起訴後も、保釈請求が認められない限り、引き続き勾留によって身柄が拘束されたまま、刑事裁判が進められていきます。
このように、身柄を拘束されたまま、捜査機関による捜査や刑事裁判が行われる事件を身柄事件といいます。
在宅起訴
在宅起訴とは、被疑者が身柄の拘束を受けないまま起訴されることをいいます。
逮捕・勾留をされず、または、勾留が取り消されたため、日常生活を送りながら、捜査機関による取調べを受け、最終的に検察官が起訴するか否かを判断します。
通常の起訴と異なり、身柄が拘束されていない状態での起訴ですから、起訴後も刑事裁判の公判期日に支障のない限り、日常生活を送ることができます。
在宅起訴について詳しく見る略式起訴
略式起訴とは、検察官が裁判所に対し、書面審査によって、被疑者を罰金または科料の処罰をするよう求めることをいいます。
通常の起訴や在宅起訴と異なり、公開の裁判は開かれず、書面審査のみで刑罰が言い渡されます。
略式起訴は、①簡易裁判所の管轄に属し、②100万円以下の罰金または科料を刑罰とする罪であり、③被疑者が正式な裁判ではなく略式手続によることに異議がない事件のときに用いられます。
不起訴
不起訴とは、検察官の判断により、起訴をしないことをいいます。検察官は、捜査機関による捜査が進められたとしても、あらゆる事件を起訴する必要はなく、起訴をしないという選択をすることができます(刑事訴訟法248条参照)。
例えば、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分である場合や、事後的に弁償したなどの事情がある場合には、不起訴となります。
不起訴について詳しく見る起訴されたらどうなる?
起訴された場合、「被疑者」から「被告人」へと立場が変わり、起訴後も勾留されている場合は保釈を請求できるようになるなどの変化があります。
立場が変わる
起訴されると、立場が「被疑者」から「被告人」に変わります。
両者ともに犯罪を行なった疑いがあるという点では共通しますが、原則的に捜査は起訴前に行われるものですから、起訴後「被告人」として、取調べ等の捜査を受けることはほとんどありません。
もっとも、起訴された事件以外にも犯罪を行なった場合、起訴の対象となっていない犯罪事実について、取調べを受けることはあります。
身柄の拘束が続く
逮捕・勾留され身柄を拘束されていた人が起訴された場合、引き続き刑事施設に身柄を拘束されることになります。
もっとも、被告人の段階になると、保釈請求により、身柄の拘束を一時的に解除するよう求めることができます。
保釈請求が認められ、保釈金を納付すれば、住居の指定など一定の制限の下、日常生活を送ることができます。
これに対し、被疑者が身柄の拘束を受けないまま起訴される在宅起訴の場合、起訴後も身体拘束を受けることはありません。日常生活を送りながら、決められた裁判の日に出廷することになります。
生活への影響が大きくなる
起訴前の逮捕・勾留による身体拘束は最長でも23日ですが、起訴後の勾留は数ヶ月続くことがあります。
法律上、起訴後の勾留期間は、起訴された日から2ヶ月とされており、以後1ヶ月ごとに更新されることになっています(刑事訴訟法60条2項)。
この更新は、原則として1回とされていますが、例外的に、刑事訴訟法89条1号、3号、4号、6号にあたる場合は、回数制限がありません。
保釈請求が認められない限り、基本的に判決の言い渡しがあるまで勾留が続くことになり、長期間仕事に行けなくなるなど、社会生活への影響は大きいといえます。
起訴までの流れ
身柄事件、在宅事件について、それぞれの起訴までの流れについてご説明します。
身柄事件の起訴までの流れ
逮捕されてしまった場合、検察官に事件が送られ(逮捕後48時間以内)、検察官が長期の身柄拘束を必要と判断した場合、勾留請求を行い(逮捕後72時間以内)、裁判官が勾留するかどうかを判断します。
裁判官の勾留決定があった場合、10日間から20日間勾留され、その間に検察官が起訴・不起訴の判断を下します。
逮捕から判決までの流れを詳しく見る起訴・不起訴決定までの期間
起訴・不起訴の判断までの流れは、先ほど、ご説明したとおりです。
勾留期間については、最初の勾留は10日間と決まっており、延長勾留の期間は最大10日間の範囲で裁判官が決定します。
ですので、起訴・不起訴が決定されるまでの期間は、逮捕されてから最長で23日となります。
在宅事件の起訴までの流れ
在宅事件の場合も、身柄事件と同様に、検察官に事件が送られ、検察官が起訴・不起訴の判断をします。
もっとも、在宅事件の場合、身柄事件のように勾留期間内に検察官が起訴・不起訴の判断をするといった期間制限はありません。
捜査にかかる期間は検察官の裁量によるため、起訴・不起訴の決定がでるまでに、数ヶ月かかることもあります。
起訴された場合の有罪率
冒頭でもご説明しましたとおり、起訴された場合の有罪率は、99.9パーセントといわれています。
検察官は、無実の人が刑事裁判にかけられることを避けるため、確実な証拠によって有罪判決が得られる見込みが高いと判断した事件のみを起訴するという運用をしており、このような運用が高い有罪率に繋がっていると説明されています。
起訴後の勾留と保釈について
通常、逮捕・勾留され身柄を拘束されていた人が起訴された場合、引き続き刑事施設に身柄を拘束されることになります。
起訴前段階と違い、起訴後は保釈を請求することができます。
保釈とは、一定額の保釈保証金の納付を条件として、勾留の執行を停止し、身体拘束から解放される制度です。
裁判所に対して、保釈請求を行い、その中で被告人の身元を引き受け、監督する身元引受人が存在すること、捜査機関による捜査や証拠収集がある程度進んだ段階であること等から、罪証隠滅のおそれがないといえることを主張していきます。
裁判所は、検察官の保釈に関する意見を踏まえて、保釈を許可・却下するか判断します。
起訴されたくない場合は?
身柄事件において起訴された場合、長期的に身柄を拘束され、もとの生活を送ることは困難になります。
また、在宅事件であっても、起訴された場合、99.9パーセントの確率で有罪になる可能性があります。
これに対し、不起訴処分がでれば、刑事裁判を受けることもなく、前科もつきません。
起訴と不起訴とでは、大きな差があるといえます。
不起訴処分の獲得
被害者がいる事件の場合、事件の内容を認めた上で反省していること、被害弁償がなされたこと、処罰を求める意思がないといった内容を含む示談書を被害者との間で取り交わしたことを主張していきます。
被害者がいない事件の場合、犯罪事実が軽微であること、被疑者が事件について反省しており、再犯の可能性がないことを主張していくことが必要です。
このような事情があれば、処罰の必要性がないとして、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
起訴前・起訴後に弁護士ができること
起訴前にできること
被害者がいる事件において不起訴を目指すには、被害者との間で示談を成立させることが重要です。
しかし、逮捕・勾留されていれば、被害者の方と面会し、示談交渉をすることはできませんし、被害者の方が被疑者本人との面会を拒絶している場合も多くあります。
その点、起訴前に弁護士がつけば、被害者の方と連絡をとり、直接面会して示談交渉にあたることができます。
起訴後にできること
起訴された後であっても、被害者との間で示談が成立していれば、量刑上有利な事情として考慮されます。
そのため起訴後であっても、示談成立の可能性があるならば、弁護士が示談交渉を行うことができます。
また、弁護活動として、身柄の解放に向けた保釈請求や、有利な判決を得るための被告人質問や証人尋問の準備も行います。
起訴に関するよくある質問
在宅起訴と略式起訴の違いがよくわかりません。
すでにご説明しましたとおり、在宅起訴とは、被疑者が身柄の拘束を受けないまま起訴されることをいいます。
逮捕・勾留をされず、または、勾留が取り消されたことにより、日常生活を送りながら、捜査機関による取調べを受け、最終的に起訴・不起訴の判断が下されます。
身柄を拘束されたまま起訴される通常の起訴と区別するために、「在宅起訴」という言葉が使われます。
略式起訴は、検察官が裁判所に対し、書面審査によって、被疑者を罰金または科料の処罰をするよう求めることをいいます。 書面審査という簡易な手続によって判決がだされるため、刑事裁判が開かれる通常の起訴と区別するために「略式起訴」という言葉が使われます。
被害者と示談出来た場合、起訴を取り消してもらうことはできますか?
起訴後に被害者と示談ができた場合であっても、起訴が取り消されることはありません。
もっとも、起訴後の示談成立であっても、量刑上有利な事情として考慮されます。
起訴後であっても示談の成立の可能性があるのであれば、示談交渉を試みるべきといえます。
起訴と逮捕は何が違いますか?
起訴と逮捕は、全く違う段階で行われる手続きです。
通常、逮捕→勾留→起訴・不起訴の処分→(起訴の場合)刑事裁判との流れで手続きが進んでいきます。
逮捕は、犯罪を行ったとの疑いのある者の身体を拘束する手続きです。被疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりする可能性がある場合に、逃亡や証拠隠滅を防止するために行われます。
起訴は、検察官が裁判所に対し、処罰をするよう求めることをいい、これによって刑事裁判が開始されます。
起訴された後、裁判までの期間はどれ位かかるのですか?
通常、起訴されてから約1~2か月後に第1回公判期日があります。
刑事裁判が終わるまでの期間は、自白事件(事実を認めている事件)か否認事件(事実を否認している事件)か、事案の複雑性によって変わってきます。
例えば、事実関係に争いのない自白事件の場合、1回の公判で審理が終わり、その約2~3週間後に判決が言い渡されるため、起訴から約2~3か月で裁判が終了します。
ご家族が起訴されるかもしれない場合、一刻も早く弁護士へご連絡ください
ご説明したとおり、生活や仕事への影響、前科がつく可能性があることを考えると、起訴されるのと不起訴処分になるのとでは、雲泥の差があります。
不起訴処分を目指すのであれば、起訴前のできるだけ早い段階に弁護士に相談し、弁護活動が開始されることが重要です。
ご家族が起訴されるかもしれない場合、一刻も早く弁護士へご連絡ください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)