逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します
今まで警察に逮捕されたことがありますか?「私は悪いことなんか何もしないし、逮捕なんかされるわけない!」と思っておられるかもしれません。
しかし、家族が逮捕されたり、あなた自身が冤罪で誤認逮捕されることだって、ないとは言えません。誰しも、逮捕される可能性はあります。逮捕などの刑事手続についての知識がないと対応に窮することは間違いありません。後述しますように、刑事事件は、早期対応が非常に重要です。記事をお読みになって、刑事手続の流れの理解を深めましょう!
目次
逮捕後の流れ
警察に逮捕されると、48時間以内に検察官のところへ「送致」されます。検察官はその後24時間以内に裁判官に勾留請求するか否かを決断します。検察官がこれ以上身体拘束をする必要がないと考えれば、「釈放」されます。検察官が勾留請求をし、これが認められると最長20日間勾留される可能性があります。検察官が逮捕・勾留期間中の捜査を踏まえ、被疑者が犯罪を行ったと考えた場合には、起訴され、裁判にかけられることになります。
1.警察による逮捕・取り調べ
警察が逮捕した後は、被疑者が犯罪を行ったことを証拠により立証するため、捜査を行います。その捜査の一環として、被疑者取調べが行われます。その取調べにより犯罪行為を行ったか否か、被疑者が認めた場合は故意に行ったのか、動機は何だったのか等が聞かれます。犯罪を認めなければ、被疑者にアリバイがあるか否か等が聞かれます。
逮捕の種類
通常逮捕
通常逮捕とは、検察官や警察官が裁判官に逮捕状を請求し、その逮捕状により逮捕することをいいます。逮捕状の請求が認められるには、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と逮捕の必要性が必要です。逮捕の必要性とは、逮捕しないと被疑者が逃走したり、証拠を隠滅する可能性があることを指します。
現行犯逮捕
現行犯逮捕は、今まさに犯行が行われている場合や犯行が終わってすぐの時に限って、逮捕状なしで逮捕できます。現行犯逮捕については、警察官や検察官でなくとも、誰でもできるのが特徴です。
緊急逮捕
緊急逮捕は、一定以上の重罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、逮捕状の請求ができない場合に限り、逮捕状の発布を待たずに逮捕することができます。ただ、後ほど逮捕状が発布されなかったときは、直ちに被疑者は釈放されます。
2.検察への送致・送検
上述しましたように、検察へ送致されると24時間以内、逮捕時から起算して72時間以内に勾留請求するか否かの判断を検察官が行います。勾留期間は、原則10日間で、最長20日間です。ただ、一度勾留請求が認められると、10日間で終わることは少なく、20日間の勾留となることも少なくありません。この間は、検察官から取調べを受けます。警察官の取調べと同じようなことを聞かれますが、裁判した場合に、有罪とできるか?という視点から話を聞かれることになります。
送致されない場合
刑事訴訟法246条本文で「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは…速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」と規定されています。これを全件送致の原則といいます。
とはいえ、ガムを1つ盗んだといった万引きのような事件をすべて検察庁に送致していると、本当に処罰の必要のある事件に対応することが出来なくなってしまいます。
そこで、246条ただし書には「但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」と規定されており、例外的に「書類及び証拠物」を検察庁に送致しなくてもよいことになっています。被害額が小さく、被害弁償もされており、被害者も処罰を希望していないような窃盗といったような事件は、微罪事件といい、上記例外に当たります。
3.勾留
勾留期間中は、警察署の留置場で過ごすことになります。勾留の期間は上述しましたように最長20日間で、一度勾留されてしまうと、20日間の身体拘束を覚悟する必要があります。20日間身体拘束されると、生活への影響は甚大です。中でも一番大きいと考えられる不利益は、仕事ではないでしょうか?職場に「実は勾留されていて…」という話をすると、解雇されるかもしれませんし、勾留の事実を黙っていれば、職場を20日間も無断欠勤することになります。
勾留と拘留は別物です
勾留と拘留は全くの別物です。勾留は上述しましたように、捜査機関が捜査をするための身体拘束であるのに対し、拘留とは、刑事罰の一種です。1日以上30日未満の期間を限度とし、刑事施設に拘置することをいいます。
4.起訴・不起訴の決定
捜査機関の捜査の結果、裁判になれば裁判官により有罪の認定がされると検察官が判断した場合は、起訴します。後述しますが、起訴された場合、自動的に被疑者勾留から被告人勾留に更新され身体拘束が継続します。身体拘束から解放されるには、保釈請求をすることになります。
一方、不起訴処分となれば、捜査機関が新証拠を発見し、検察官が起訴することができると判断するような例外的な場合を除いて、刑事裁判にかけられるということはないです。不起訴処分となれば捜査機関が捜査を続行するということは基本的にありませんので、不起訴処分の獲得を目指していくことが非常に重要です。
起訴の種類
皆さんは、ニュース等で在宅起訴や略式起訴といった言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。
在宅起訴とは、被疑者の身体を拘束しないまま起訴することです。
略式起訴は、被疑者の同意を条件として、通常の刑事裁判と比較して簡易な手続の裁判が行われるものです。100万円以下の罰金又は科料を刑罰とする場合のみで略式起訴は行うことができ、懲役刑となることが想定されている場合は対象外です。
不起訴の種類
不起訴処分には、嫌疑不十分と起訴猶予があります。
嫌疑不十分というのは、犯罪行為がそもそも存在しない場合や、犯罪行為をしたことを証拠により証明できない場合のことをいいます。
起訴猶予(処分保留)とは
起訴猶予とは、起訴すれば有罪判決になるとは思うが、検察官判断で起訴しない場合のことをいいます。起訴できるのに、なぜしないのか疑問を持たれた方もおられると思います。
例えば、すでに被害者との間で示談が成立しており、被害者に処罰感情がない場合や、あまりに罪が軽く裁判にかけるほどでもない場合(盗んだものが数十円など)に起訴猶予となることがあります。不起訴処分の多くは、起訴猶予です。
起訴後、保釈されるには
起訴されると、保釈請求をすることができます。なぜ起訴後でないと保釈請求できないかというと、起訴不起訴の判断を決めるために捜査をする必要がありますが、その間に被疑者に逃亡されたり、事件の証拠を隠滅されるとその判断が正確にできないからです。この考え方は、起訴後においても妥当します。被告人に逃走されたり、裁判に影響する証拠が隠滅されては適正な裁判が行われなくなります。
したがって、保釈請求が認められるためには、被告人の逃亡すると疑うに足りる相当な理由が認められず、すでに証拠収集活動が終わり、証拠を隠滅されたとしても裁判に影響がない・小さいと裁判所に認められる必要があります。
起訴後の勾留について
被疑者勾留中に起訴された場合、被告人勾留に自動的に切り替わります。被告人勾留の期間は2か月で、その後1か月ごと更新されていくことになります。つまり、保釈されなければ、被告人が逃走したり、証拠を隠滅する可能性があるような場合は、被告人が被告人勾留は更新され続けるということです。
ただ、裁判が進行すれば、被告人を有罪とするための証拠を裁判所が見ることが出来るようになります。とすると、証拠隠滅されたら裁判に影響を与える可能性がある証拠の存在はどんどんなくなっていきます。つまり、裁判が進行すればするほど、証拠隠滅の可能性が下がりますので、保釈が認められる可能性が高くなっていくことになります。
5.刑事裁判
「99.9%」
日本の刑事裁判の有罪率です。この数字は、否認事件だけでなく、自白事件も含んだものですが、無罪の確率は0.1%ということになります。検察官は、基本的に裁判で有罪になる場合しか起訴しません。間違いなく有罪になる、という確信をもって起訴していることを念頭に置く必要があります。となると、いかに検察官の起訴を免れるかが勝負になることがお分かりいただけると思います。
6.有罪判決を受けた場合
有罪判決を受けたからといって、すぐに刑務所に入ることが決まっているわけではありません。有罪判決の中には、実刑判決と執行猶予付き判決があり、後述しますが、執行猶予付き判決の場合は、執行猶予期間中何らの罪を犯さず、過ごすことができれば刑を受ける必要はありません。以下、実刑判決と執行猶予付き判決についてくわしく説明します。
実刑判決とは
実刑判決とは、執行猶予のつかない有罪判決のことをいいます。執行猶予は読んで字のごとく、刑の執行を猶予するという意味です。刑の執行が猶予されない実刑判決は、有罪判決が確定すると、懲役刑を受けたり、罰金を受けたりすることになります。
執行猶予付判決とは
ニュース等で「懲役〇年執行猶予〇年」というような言葉を聞いたことがあると思います。執行猶予が付された有罪判決は、何らの罪を犯すことなく、その年数を過ごすことができれば、刑を受ける必要はなくなります。ただ、執行猶予期間中に何らかの罪を犯して起訴された結果、有罪判決が下されると、執行猶予は基本的に取り消されてしまいます。ということは、新たに犯した罪の刑と執行猶予が付されていた刑を合わせて受けることになり、長期間刑務所生活を送ることになります。
逮捕後、早期に釈放されるためには
身体拘束期間が長期にわたると、仕事を欠勤することになった(解雇された)、子供だけで家にいる、ご近所さんに噂される、などなど不利益は考えれば数知れず存在します。身体拘束期間は短ければ短いほど良いです。いかに早期に釈放されるかを考えていかなければなりません。
いかに早く弁護士へ依頼できるかがポイント
刑事弁護の世界では、とにかく初回接見が重要と言われています。接見というのは、弁護人と被疑者が話をすることをいいます。接見での話し合いによって、取調べに対する対応方法等の今後の弁護方針を確定させていきます。ですので、逮捕後取調べを受けるまでの間に早く初回接見を行うことがとにかく重要です。初回接見で弁護人と作戦会議をします。初回接見が遅くなると作戦会議をしないまま取調べを受けることになり、圧倒的に不利な戦いを強いられます。
不起訴の獲得
上述しましたように、日本の刑事裁判の有罪率は、99.9%です。起訴されると非常に高い確率で有罪となります。有罪にならないためには、不起訴にされることが一番重要です!
弁護士へ依頼できるタイミング
ここまでの内容で、弁護人を早い段階で立てることが重要だというのは、お分かりいただけたと思います。では、どのタイミングで弁護人の選任を依頼できるのか、見ていきましょう。
刑事訴訟法37条の2において、「被疑者に対して勾留状が発せられている場合において、被疑者が貧困その他の理由により弁護人を選任することができないとき」に限り、国選弁護人が選任されると規定されています。つまり、被疑者勾留されるまでは、私選で弁護人を選任しない限り、弁護人がいない状態で取調べを受けることになります。
一方、私選弁護人の場合は、国選弁護人の場合のように被疑者勾留後でないと選任されない、ということはありません。刑事訴訟法30条1項には、「被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。」と規定されており、逮捕前や逮捕されてすぐのタイミングであっても選任することができます。
私選弁護士依頼の重要性について
上述しましたように、国選弁護人が選任されるのは、被疑者勾留後になってしまいます。それまでの間は弁護人がいない状態で取調べを受けることになります。
確かに、当番弁護士制度というものがあり、逮捕後1回だけ無料で弁護士と接見できますし、当番弁護士を私選で選任することはできますが、自由に当番弁護士を選ぶことはできません。
また、逮捕直後や逮捕前の段階から、介入できるのは私選のみです。
繰り返しになりますが、刑事弁護においては、起訴されるまでの被疑者段階での弁護活動が非常に重要です!早期段階での弁護士への依頼をお勧めします。
出来るだけ早く弁護士へご相談下さい
ここまでこの記事をお読みいただいた方には、とにかく早期段階で弁護人を選任することの重要性がお分かりいただけたと思います。早ければ早いほど、作戦を立てて防御活動をすることができます。被疑者段階では、不起訴処分を獲得するように活動することが非常に重要です。起訴された場合は、ほぼ有罪判決が下ってしまうということを念頭に置く必要があります。国選弁護人は、被疑者勾留後でなければ選任されず、自由に弁護人を選ぶこともできません。
あなた自身が逮捕されるかもしれない、ご家族が逮捕されてしまった、という場合には、私選弁護人の依頼を考えてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修
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大阪弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。