監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
人が亡くなったとき、亡くなった方(“被相続人”といいます。)のどのような関係をもつ人が法定相続人になるのでしょうか。配偶者がいるとき、お子様がいるとき、ご両親がいるとき、ご兄弟がいるとき……被相続人と一定の親族関係にある人の全てが法定相続人となり、遺産を受け取れるわけではありません。
以下では、法定相続人の相続順位について説明したいと思います。
目次
相続順位とは
民法上規定されている法定相続人には、身分類型毎に順位付けがされており、より上位の類型に属する人が存在するとき、より下位の類型に属する人は法定相続人になることができません。
以下で説明するとおり、民法上、配偶者は常に法定相続人になります。そのうえで、①子、②親、③兄弟姉妹の順位が民法上規定されています。
配偶者は原則的に法定相続人(順位無し)
被相続人の配偶者(夫からいう妻、妻からいう夫のことをいいます。)は、被相続人の子、親、兄弟姉妹の有無に関係なく、常に法定相続人になります。
ここでいう「配偶者」は戸籍上のそれでなければなりません。ですから、法的には夫婦ではない人=社会生活上夫婦同然の生活をしていた人、いわゆる内縁の妻、夫でしかない場合は、その人は法定相続人になりません。
第1順位は子供
法定相続人の第1順位にあるのは、被相続人の「子」です。
ここでいう「子」には、被相続人と血のつながりのある実子だけでなく、被相続人の養子も含み、およそ戸籍上被相続人との間に親子関係が認められる人の全てが「子」にあたります。また、まだ生まれていない“胎児”も法定相続人となります。
胎児も相続人として認められる
民法上、まだ妊娠中で、生まれていない「胎児」も、相続については、既に生まれたものとみなされ、法定相続人となります(民法886条1項)。但し、その胎児が死産となってしまった場合、既に生まれたものとはみなされなくなります(同条2項)。
民法ではこのような規定になっていますから、胎児がいるから、そのことを前提に遺産分割協議を行ったが、胎児は死産だったという場合、遺産分割協議はやり直しということになってしまいます。ですから、無用なトラブル等を防止するためにも、胎児が無事生まれるのを待ってから法定相続人を確定させることが重要です。
養子の相続順位
被相続人の「子」には養子も含まれるので、被相続人に養子がいる場合は、被相続人との血の繋がりの有無に関係なく、その養子は第1順位の法定相続人となります。養子縁組さえされていれば、実態としての親子関係の有無にかかわりなく、法定相続人なります。
養子は、被相続人と血のつながりのある子=実子と相続資格において何ら変わりがないので、実子と同じ法定相続分を有します。
隠し子や未婚の子がいた場合
戸籍上の親子関係さえあれば、「子」にあたるので、第1順位の法定相続人になります。ですから、被相続人から認知を受けただけで、生前の被相続人との間に実態としての親子関係が一切存在しなかった子も、戸籍上の「子」である以上、法定相続人になります。被相続人が死亡した後に戸籍を調査してみると、結婚はしなかったけれども、女性との間に子を設けており、その女性との間に生まれた子を認知していたことが判明するという事例もあります。
また、「認知」には被相続人が死亡した後に行われる死後認知(民法787条但書参照)もあるので、注意が必要です。
第2順位は親
被相続人に子がいなかった場合、あるいは、子がいるけれども“全員が”相続放棄をする等して相続人でなくなってしまった場合、配偶者の有無にかかわらず、第1順位である「子」の次の順位にある被相続人の親(両親)が第2順位として法定相続人になります。被相続人の親のうち一方が、被相続人が死亡するよりも前に死亡している場合は、残りの一方の親が法定相続人になり、いずれの親も死亡している場合は、法定相続人は、第3順位である被相続人の「兄弟姉妹」に移ることになります。
第3順位は兄弟姉妹
被相続人に子もいない、親もいないとなれば、第3順位として被相続人の「兄弟姉妹」が法定相続人となります。そして、ここでいう「兄弟姉妹」は、被相続人と両親がともに共通している兄弟姉妹に限らないので、いわゆる腹違い・種違いの兄弟姉妹も「兄弟姉妹」として法定相続人になります。
腹違い・種違いの兄弟姉妹については、戸籍をしっかりと収集して確認をするのでなければ、有無が確認できないので注意が必要です。
第4順位以降は存在しない
子もいない、親もいない、兄弟姉妹も含めて全ていないとなれば、それ以降法定相続人の順位があがることはなく、相続人不存在という状態になります。民法上、第4順位以降の法定相続人は定められていないので、どれだけ社会生活上密接な関係を有していたとしても、例えば、従兄弟(従姉妹)や伯父(叔父)・伯母(叔母)が被相続人の法定相続人となることはありません。
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相続順位の特殊例 代襲相続とは
代襲相続とは、本来法定相続人となるはずであった人が既に死亡するなどしていた場合に、その子などが本来相続人となるはずであった人に代わって相続することをいいます。
法定相続人の順位と関係する、子がいない、兄弟姉妹がいないという状態は、(再)代襲相続も含めてのことですから、子はいなくても孫はいる、兄弟姉妹はいないけれども甥はいる、というような場合は、法定相続人の順位の問題としては、それぞれ「子」がいる、「兄弟姉妹」がいるということになるので、ご注意ください。
代襲相続が起きるケース
代襲相続が起きるのは、被相続人の子や兄弟姉妹が、①被相続人が死亡するよりも前に死亡していたときや、②相続人の欠格事由に該当していたとき、③廃除によって相続権を失ったときだけです。
ですから、例えば、被相続人の子が相続放棄をした場合、その子に子がいたとしても(被相続人にとっての孫がいたとしても)、相続放棄は代襲相続の発生原因ではないので、被相続人の孫は、法定相続人にはなりません(ですから、この場合、被相続人の孫は、わざわざ相続放棄をしなくても足りることになります。)。
代襲相続ができるのは誰か
法定相続人である「子」を(再)代襲相続するのは、孫やひ孫となります(民法887条2項、3項)。
ただ、養子の子が養子縁組よりも前に生まれていた場合(養子の子が“連れ子”にあたる場合)、その養子の子は「直系卑属」ではないことになるので、代襲相続は発生しません(民法887条2項但書)。
再代襲相続は第1順位のみ
代襲相続人となる被相続人の孫が被相続人よりも先に死亡等していた場合、代襲相続人を更に代襲する再代襲が発生します(民法887条3項)。この場合、被相続人の孫の子=ひ孫が法定相続人になります。
また、再代襲相続は「子」についてしか認められていないので、被相続人よりも先に兄弟姉妹の子=甥・姪が死亡していた場合、被相続人の甥・姪の子=兄弟姉妹の孫以下の世代の人は法定相続人になりません。
相続順位が繰り上がるケース
被相続人に子はいるけれども、“全ての”子が相続放棄をした場合、法定相続人の順位が繰り上がり、被相続人の親が法定相続人になります。また、“両親ともに”相続放棄をした場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。
ですから、相続順位が低い人としては、先に相続順位の高い子や親がいるからといって、決して法定相続人になり得ないというわけではありません。
相続順位はトラブルも多いので弁護士にご相談ください
被相続人が死亡したとき、法定相続人を確定させるためには、相続の順位に従って戸籍をたどり、法定相続人になり得る人がいるかどうかを調査しなければなりません。そして、法定相続人になり得る子、親、兄弟姉妹がいたとしても、それらの人が相続放棄をしているかどうかもまた調査をしなければなりません。
このように、法定相続人を確定させる作業は調査の連続であり、取得できた資料の精査する作業も大変なことが多いです。
法定相続人を確定させる作業は、被相続人の遺産について遺産分割協議を始めるにあたっての必須の作業です。お困りのことがあれば、是非お気軽に弊所にまでお問合せ、ご相談してください。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)