共同相続とは|トラブルを避けるために知っておくべきこと

相続問題

共同相続とは|トラブルを避けるために知っておくべきこと

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

被相続人が亡くなられた場合、相続財産は相続人が承継します。相続人が2人以上いる場合、相続財産はその相続人らの共有となります(民法898条)。このことを「共同相続」といいます。共同相続が続くことは、つまりそれぞれの相続財産が誰のものとなるか確定していないということであり、トラブルのもととなってしまうことが多いです。
共同相続とはどのようなものか、その状態で何ができるのかなど、みていきましょう。

共同相続とは

相続が発生すると、自動的に相続が発生します(民法882条)。遺産分割が終わるまでは、それぞれの財産が相続人のうちだれのものになるのか確定せず、相続財産は相続人全員の共有財産となりますが、この共有状態を「共同相続」といいます。遺産分割が完了しないのであれば、その共同相続が継続します。共同相続の状態では、共同相続人全員の同意がなければできない行為があるなど、制約が多い状態となります。

共有財産とは

「共同相続」の状態になる財産、つまり共有財産の範囲は、遺産分割の対象になるもの、と考えることになります。代表的なものでいえば、不動産や株式、預貯金になるでしょう。
なお、死亡保険金などは相続財産とはならず受取人固有の財産になるため、そもそも遺産分割の対象とはなりません。

共同相続人と法定相続人の違い

共同相続人とは、複数の相続人がいるときに、遺産分割未了状態の相続財産を共有している人のことをいいます。法定相続人は、民法によって相続人となることが定められている人のことです。
法定相続人が1人しかいない場合、そもそも【複数の相続人】がいる状態ではないため、共同相続人という存在自体がいないことになります。
法定相続人が数人いて、法定相続人が遺産分割未了の状態の相続財産を共有している場合には、法定相続人=共同相続人、となります。

共同相続人ができること

単独でできる行為

共同相続人は、単独でできる行為と、できない行為があります。まず、単独でできる行為の代表的な例は以下のとおりです。

①持分に応じた使用(民法249条)
持分に応じた使用については、他の相続人に害を及ぼす危険性がないため、当然単独でできます。例としては、不動産の家賃収入を持分に応じて分配し受領することがあります。

②保存行為(民法252条ただし書)
その共有財産の価値を維持するような行為は、他の相続人にとっても利益となるものであり、単独で行うことができます。例としては、古くなってしまった不動産の修繕や、無効な登記を抹消するなどが挙げられます。

③共同相続登記
共同相続人が法定相続分どおりに相続登記を行うことを「共同相続登記」といいます。これについても、法律に従った状態を維持するものであるため、単独で行うことができます。

全員の同意書が必要な行為

上記とは反対に、共同相続人全員が同意しなければできない行為も多々あります。その財産の状態を根本的に変えてしまうような場合には、全員同意のもとでなければ、誰かに不利益を与えてしまう危険性があるためです。全員の同意が必要な行為としては、①売却、②担保設定、③預金払戻しが挙げられます。
なお、現在は遺産分割が完了していなくとも、共同相続人のうち一人が単独で、預金の一部を払い戻すことができるようになりました。ですが、あくまで一部に限られますのでご注意ください。

共同相続人を辞退する方法

共同相続人はすなわち法定相続人となります。共同相続人を辞退したい、となると相続人である状態を脱却する必要があります。そうなると、相続放棄をする必要があります。つまり、口頭や書面で単に「共同相続人から外れます」と意思を表明するだけでは足りません。
相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があるため、相続開始後速やかに判断しなければなりません。

遺産分割協議をしないと共同相続状態が解消できない

共同相続状態を解消するには、遺産分割を終える必要があります。遺産分割の終え方には、協議や調停などがあります。共同相続人の一部が参加せずに終わらせた遺産分割は、無効なものとなります。つまり、話合いによる場合には、共同相続人全員が参加し、納得する内容でなければ、共同相続状態は解消することができないのです。

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限定承認したい場合は共同相続人全員の同意が必要

相続財産の範囲内で相続した負債を弁済し、余剰部分について承継することを限定承認といいます。限定承認は、共同相続人の全員が共同して行う必要があることに注意する必要があります(民法923条)。
つまり、共同相続人のうち誰か一人でも単純承認をしてしまえば、その他の共同相続人は限定承認の手続きをとることができなくなってしまいます。限定承認の手続きを取ることを検討するのであれば、共同相続人全員と足並みを揃える必要があることにご注意ください。

共同相続した家に住み続けることはできるのか

相続財産の中に不動産が含まれており、もともと居住していたケースはよく見られるところです。このような場合、共同相続人のうちの1人が住み続けることは可能でしょうか。
結論として、住み続けることは可能です。共同相続しており、自己の持分に応じて使用することができるためです。その他の共同相続人から、家から出るようにと言われたとしても問題にはなりません。
ただ、共同相続した不動産にその後長年住み続けたからといって、時効取得を主張しても認められることは非常に難しいものとなります。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

共同相続人のうち1人が、遺産分割前にその相続分を第三者に売却してしまったときには、他の相続人は、その価額と費用を償還して、その相続分を譲り受けることができ、この権利を相続分取戻権といいます。これは、遺産分割協議において相続人以外の第三者が関与することを防ぐための制度になります。この価額とは、取戻権を行使するときの時価額になります。売却ではなく、無償でその相続分を渡していたとしても、時価相当額を支払う必要があることに注意して下さい。
この権利行使は、1か月以内に請求する必要があり、期間が短いので注意が必要です。

共同相続はトラブルになりやすい

相続人の中でも考え方は千差万別であり、共有財産の管理方法で揉めるケースは多々あります。また、処分するにも相続人全員の同意が必要となるため、共同相続の状態を継続させるのは、紛争を巻き起こすことになりかねません。
共同相続の状態を解消せずトラブルが生じた結果、もともと仲の良かった関係性にヒビを入れてしまうこともあるため、共同相続の状態は可能な限り早急に解消したいものです。

共同相続は早めに解消を。弁護士にご相談ください。

共同相続を解消するためには、上でみてきたように遺産分割を完了させることが必要です。遺産分割協議についていえば、早く完了させたいと考えて行動したとしても、他の共同相続人が多忙であるなどして足並みが揃わず、なかなか協議が完了しないことも多くありますし、感情が先に立ってしまうなどして建設的な議論ができず協議が進まないことも多くあります。
遺産分割をどのように進めていけばよいか、ご不安なことやお悩みについては一度専門家である弁護士にご相談ください。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。