交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

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交通事故の示談は時効に注意!延長する方法は?

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

交通事故の被害者になってしまった場合、加害者に対し、事故によって被った損害の賠償を請求することができます。

しかし、交通事故の示談交渉が長引いてしまうと、時効期間の経過により、損害賠償請求権を行使できなくなる可能性がございます。そのため、示談交渉を進める際には、交通事故がいつ発生し、いつ時効を迎えてしまうのかといった点を意識しておく必要があります。

本ページでは、交通事故の損害賠償請求の時効について、詳しく解説いたします。

交通事故の損害賠償請求は3年または5年で時効となる

交通事故の損害賠償請求権の時効期間は、物の損害(車の修理費用等)については「3年」、人の生命・身体に対する損害(治療費等)については「5年」と定められています(民法724条1号、724条の2)。

なお、令和2年4月1日に改正民法が施行され、それまでは物損と人損の時効期間について、いずれも「3年」と定められていました(改正前民法724条)。

改正民法の施行日である令和2年4月1日よりも前に発生した交通事故であっても、同日時点に「3年」の時効が完成していない場合には、改正民法が適用され、人損の時効期間は「5年」となります(附則(平成二九年六月二日法律第四四号)35条2項)。

時効のスタートはいつから?

交通事故の損害賠償請求の時効は「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」からスタートします(民法724条1号)。

午前零時丁度に交通事故が発生しない限りは、以下の表に記載しているとおり、時効期間は「損害及び加害者を知った」日の翌日を1日目として時効期間をカウントします(民法140条)。
また、当て逃げ・ひき逃げによって加害者の情報を知ることができない場合には、交通事故発生の翌日から20年経過することにより、時効が完成します(民法724条2号)。

事故の種類 時効
物損事故 交通事故発生日の翌日から3年
人身事故 交通事故発生日の翌日から5年
死亡事故 死亡した翌日から5年
当て逃げ・ひき逃げ 交通事故発生日の翌日から20年(※後日加害者が判明し、かつ
損害も確定している場合には、その翌日から物損3年、人損5年)

交通事故示談で時効が近い場合の注意点

交通事故の示談交渉は、あくまで話合いですので、過失割合や賠償額について、双方折り合いがつかないまま、気が付けば時効間近といった状況になることがあります。

時効が間近に迫っている状況ですと、その焦りから、相手方保険会社から提示された賠償額で合意してしまい、結果的に適正な賠償額を受けられなかったという事態になりかねません。

また、一度示談を成立させてしまうと、基本的にその内容を覆すことはできないため、安易に示談に応じることはお勧めしません。
時効が近い場合には、以下で説明する時効期間の延長手段をとるべきです。

交通事故の時効を延長する方法は?

交通事故の時効を延長する方法として、①時効の完成猶予と②時効の更新といった制度があります。
①時効の完成猶予とは、時効がまだ完成していない段階であっても、一定の事由があれば、一時的に時効期間の完成を停止させることいいます。

②時効の更新とは、一定の事由があれば、これまで進行していた時効期間をゼロにし、新たに時効期間をスタートさせることをいいます。

では、それぞれどのような事由があれば、①②の方法により、時効期間を延長させることができるのでしょうか。

請求書を送付する(催告)

加害者に対し、「損害賠償金として・・・円支払ってください」といった内容の請求書を送付する行為は、法律上「催告」という行為にあたります。
催告は、時効の完成猶予事由にあたり、「催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間」は、時効が完成しません(民法150条)。

そのため、加害者に対し、請求書を送付することにより、時効が6か月間延長されることになります。
なお、催告を繰り返すことによって、時効期間をさらに延長することはできないため、延長された6か月の間に示談を成立させたり、訴訟を提起したりする必要があります。

加害者に債務を認めてもらう

加害者が損害賠償金の支払債務を認める行為は、時効の更新事由にあたり、債務を認める行為があった時から新たに時効期間がスタートします(民法152条)。

例えば、治療が長引き、時効が近づきそうな場合には、「交通事故の損害賠償債務について、時効の更新事由としての債務の承認をする」という内容の時効更新申請書に加害者に署名捺印を求めます。

加害者側がこのような内容の書面に署名捺印をすることによって、新たな時効期間がスタートしますので、その間に示談交渉を開始したり、訴訟の準備を進めたりすることができます。

裁判を起こす

裁判を起こして損害賠償請求を行うことは、時効の完成猶予事由にあたり、その裁判が終了するまでは、時効が完成しません(民法147条1項)。

そして、裁判の結果、確定判決や和解などの確定判決と同一の効力を有するものによって、損害賠償請求権が確定したときは、裁判が終了した段階で時効が更新され、新たな時効期間がスタートします(同条2項)。この場合の時効期間は、これまで説明した時効期間ではなく、一律に「10年」と定められています(民法169条1項)。

なお、損害賠償請求権が確定せずに裁判手続が終了した場合であっても、その終了の時から6か月を経過するまでは時効は完成しないため(民法147条1項)、その間に示談交渉を成立させたり、再度時効を延長する手段を講じたりする必要があります。

示談が進まない場合の対処法

交通事故の示談交渉では、事故態様や過失割合、賠償額について、当事者双方の主張が食い違い、話が平行線を辿り、なかなか示談交渉が進まないケースが多々あります。

そのような場合には、弁護士にご依頼いただけますと、弁護士が客観的な根拠に基づいた主張や弁護士基準を用いた損害賠償請求を行うことで、加害者側の主張が一変する可能性がございます。

また、弁護士は裁判も視野に入れて交渉を行います。加害者側が裁判を避けたい場合、何とか示談で終わらせたいという意向から、結果的にこちら側の提示する条件で示談を成立させられる可能性が高まります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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交通事故で時効が気になる場合は弁護士にご相談ください

交通事故の示談交渉は、治療期間が長引いたり、事故態様等で揉めたり、様々な原因によって、長期化することがあります。

時効期間を意識しながら、加害者との間で示談交渉を進めることには限界があるかと思います。
時効が迫っている焦りから、妥協して示談を成立させるのではなく、少しでも時効について不安を感じておられましたら、一度交通事故に精通した弁護士までご相談いただくことをお勧めします。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。