AIと法的責任

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

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並列処理システムやソフトウェアの進化によりAIが著しく進化しており、人の生活に変化をもたらしています。自動運転やsiri、Google Lens等のAIの成果物を初めて使用した時に驚嘆した方も多いのではないでしょうか。医療業界にもAIの応用の波は押し寄せています。十分な機能を持った自動アシスト麻酔や自動画像診断が簡単に実現する訳ではないかもしれませんが、着実に技術的な進歩が生じています。例えば、理化学研究所の研究グループは、AIに自力で病理画像から癌に関する特徴を発見させることに成功しています※1。また、福井大学の重見研司教授、松木悠佳助教らは「ロボット麻酔システム」の開発を進めています※2。これらの技術により元々過剰労働であった医師達の労働環境が改善し、患者にとっても安全な医療が実現するかもしれません。

※1 Yoichiro Yamamoto, et al.“Automated acquisition of explainable knowledge from unannotated histopathology images“, Nature Communications, 10.1038/s41467-019-13647-8

※2 https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2019/20190416152007.html

他方で、人工知能を医療現場に応用して医療過誤が生じた場合に、既存の法律の要件を当てはめることが困難かもしれないと指摘する研究者もいます※3

※3 Canales, Cecilia MD, MPH et al.“Science Without Conscience Is but the Ruin of the Soul: The Ethics of Big Data and Artificial Intelligence in Perioperative Medicine“Anesthesia & Analgesia: May 2020 – Volume 130 – Issue 5 – p 1234-1243doi: 10.1213/ANE.0000000000004728

また、自動運転が関係する交通事故のように、医師がシステムの不具合を主張し、医療機器メーカーが医師の責任を指摘するような事態が現実に医療現場でも起きると思います。現実にAIを応用したものではなくても医療機器の不具合が介在する事案では擦り付け合いが生じることがあり、当職もそのような事件を担当したことがあります。

では、そのような事案では、誰が有害事象の責任を負うべきでしょうか。現在の日本では、自動運転(運転者の操作が介在するレベル3)で交通事故が生じた場合には、法的責任を負う主体は事案によって異なると考えられているようです。しかし、システム自体の問題を明らかにすることは極めて高いコストがかかり、本当に誤作動が生じている場合でもシステムの不具合を主張立証(そして裁判官が理解)することは難しいことが想定されます。医療訴訟においても、立証が困難であることにより、医師が過剰な責任を負う可能性は十分にあると思います。

個人的には、医師ないしシステムの責任により患者に有害事象が生じた場合には、患者に対する補償は実現しつつ、責任の度合いに応じて医療機器メーカー側にも負担を適切に配分することができれば理想的であると考えています。

この記事の執筆弁護士

大阪法律事務所 副所長 弁護士 髙橋 旦長
弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 副所長弁護士 髙橋 旦長
大阪弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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