ダブル不倫の慰謝料 相場や請求方法など解説

離婚問題

ダブル不倫の慰謝料 相場や請求方法など解説

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹

監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士

この記事では、いわゆるダブル不倫といわれるケースにおける慰謝料請求などの法律関係について解説いたします。

ダブル不倫のケースでは、下記で詳しく解説するとおり、1つの不貞行為で2つの損害賠償請求権が発生したり、求償の問題が生じたりすることが想定され、法律関係が複雑化しやすいため、専門知識を有する弁護士へのご相談をおすすめします。

ダブル不倫とは

ダブル不倫(W不倫)とは、既婚者同士が配偶者以外の者と肉体関係(不貞行為)を持つことをいいます。

法律上、不貞行為は、「婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益」を侵害する行為として不法行為(民法709条、710条)に該当し、不貞された場合には慰謝料を請求することができます(損害賠償請求権が発生する)。

ダブル不倫においては、不貞関係が1つでありながら、不貞された人が2人存在するため2つの損害賠償請求権が発生するという点に特徴があります。

慰謝料を請求する相手

法律上、不貞行為に及んだ当事者は、「共同で不法行為をした」という扱いになります(民法719条1項)。

したがって、配偶者に不貞された場合には、配偶者とその不貞相手の双方に対して不貞慰謝料を請求することができます。

そこで、配偶者に不貞された場合、①配偶者、②配偶者の不貞相手のいずれか一方または双方を相手として、慰謝料を請求することとなります。

ただし、配偶者とその不貞相手は、共同で一つの慰謝料支払義務を負う関係にあります。

そのため、両者に請求すること自体は可能ですが、受け取ることができる慰謝料の額が倍になるわけではなく、両者から受け取れる合計額は、その事案について認められる慰謝料額にとどまります。

たとえば、慰謝料の額が200万円とされるケースでは、配偶者とその不貞相手の両者に対して200万円を請求することができますが、両者から受け取ることのできる賠償額の合計は200万円までであり、両者から200万円ずつ(総額400万円)を受け取ることができるわけではありません。

ダブル不倫では慰謝料請求が難しいといわれる理由

ダブル不倫特有の慰謝料請求の難しさは、家庭単位でみた場合、慰謝料請求が一方的に行われるのではなく、双方から行われる可能性がある点にあります。

たとえば、配偶者に不貞された場合、配偶者の不貞相手に慰謝料請求をしたとしても、不貞相手の配偶者から配偶者に対して、慰謝料請求がなされる可能性があります。

配偶者と離婚せずに婚姻生活を続ける場合には、家計単位でみると、配偶者の不貞相手から慰謝料を受け取ることができたとしても、その一方で不貞相手の配偶者に対して慰謝料を支払う必要があり、結果として家計に増減がない、場合によってはマイナスになり得るというリスクがあります。

これが、ダブル不倫特有の慰謝料請求の難しさです。

不貞慰謝料の相場はいくら?

離婚する場合 100万円~250万円
離婚しない場合 50万円~150万円

不貞慰謝料のおおよその相場は、上の表のとおりです。

もっとも、上記の慰謝料額の相場はあくまで目安であり、不貞回数、不貞期間、婚姻期間、子の有無、婚姻関係の状態(不貞行為の後に夫婦関係が修復されて「継続」したか、あるいは離婚に至り「破綻」したか)などの事情によって、変わる可能性があります。

不貞慰謝料額の算定において考慮される事由

不倫の期間や頻度

不貞関係が長期間に及ぶ場合や、肉体関係の頻度が高いほど、精神的苦痛は大きいと評価され、慰謝料の増額事由になります。

なお、裁判例上、不貞期間が1年に満たない場合には、慰謝料が減額されることがあります。

不貞行為に及んだ当事者の態度

不貞発覚後、不貞行為に及んだ当事者の態度が不誠実である(反省を示さない、不貞関係を終わらせるつもりがないのに虚偽の謝罪をするなど)という事由は、慰謝料が増額される根拠となることがあります。

婚姻期間の長さ

夫婦の婚姻期間が長いほど、権利に対する侵害の程度が大きいとみなされ、慰謝料が増額される傾向にあります。
裁判例上、婚姻期間が比較的短いと評価される目安は、4年程度までといわれています。

子どもの有無

不貞行為の結果、離婚に至ったような場合、未成熟の子どもがいればその子の養育・監護を1人で行わなければならなくなることがありますが、そのような場合の精神的苦痛は大きいといえます。

また、未成熟の子どもがいるにもかかわらず、不貞に及ぶことは悪質性の高い行為であるといえ、その分受ける精神的苦痛の程度も大きくなると考えられます。

したがって、裁判例では、未成熟の子どもがいる場合には、慰謝料額が増額される傾向にあります。

夫婦関係が円満だったかどうか

夫婦関係が破綻していなければ、「婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益」が存在することを意味します。

夫婦関係が円満であればあるほど、不貞行為によって夫婦関係が悪化した場合には、その分権利・利益が侵害されたことによる精神的ダメージが大きくなると考えられるため、裁判例上、慰謝料が増額される傾向にあります。

一方で、不倫の時点ですでに夫婦関係が破綻していた場合は、保護されるべき権利・利益が存在しないと評価されて、慰謝料を請求することができません。

ダブル不倫で慰謝料を請求する方法

慰謝料請求のための証拠を集める

慰謝料請求を成功させるには、不貞行為を推認させる客観的な証拠が不可欠です。

具体的には、不貞相手とホテルに入る写真や動画、不貞行為に関する記載のあるメッセージのやり取り、不貞相手との旅行の写真、宿泊先の領収書などが挙げられます。
また、不貞を認める旨の念書、不貞を認める内容の発言をした録音なども証拠となります。

当事者間の話し合いで慰謝料の請求額を決める

慰謝料請求をする際、まず当事者同士の話し合い(交渉)によって慰謝料の額を決めることが考えられます。

交渉においては、①不貞行為を証明できるレベルの証拠があるか、②相手にどれくらい支払い能力があるか(収入、資産、預貯金など)、③配偶者やその不貞相手に優先的に求めたいことは何か(謝罪、金銭的な賠償など)といった事情を踏まえて交渉に臨むこととなります。

内容証明郵便を送る

交渉を試みても、相手方が話し合いに応じない、または相手の連絡先や住所は分かるが直接会えない場合は、内容証明郵便で慰謝料を請求する旨を通知します。

内容証明郵便を用いることで、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の手紙を出したか」を公的に証明することができます。

また、内容証明郵便での請求は、消滅時効によって権利の消滅が間近に迫っているときに役立ちます。

下記で詳しく解説するとおり、慰謝料を請求する権利は、一定の期間が過ぎると消滅してしまいます(これを「消滅時効」といいます。)が、内容証明郵便を送ると、民法150条の「催告」にあたり、時効期間のカウントを6か月間ストップさせることができます。

ただし、これはあくまで一時的な「時間稼ぎ」である点には注意が必要です。

6か月を過ぎるとカウントは再開してしまうので、この6か月の間に訴訟を起こすことが必要になります(訴訟を起こせば、改めて時効期間のカウントを止めることができます)。

合意できなければ訴訟(裁判)を検討

交渉が決裂した場合は、裁判所の法的手続きへ移行します。
すなわち、配偶者や不貞相手に対して損害賠償請求訴訟を提起することとなります。

交渉を継続するか、交渉を打ち切って訴訟へ移行するかの判断にあたっては、訴訟をする意義やリスクを踏まえた検討が必要です。

すなわち、相手の支払能力が不十分である場合、相手に求めたいことが謝罪など金銭面以外の事柄である場合、訴訟に移行しても受け取れる金銭の増額が見込めないような場合などには、交渉を打ち切って訴訟を提起したとしても、最終的に満足のいく解決にはならない可能性があります。

したがって、交渉を継続するか、訴訟に移行するべきかについては、十分に検討する必要があります。

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ダブル不倫の慰謝料を請求する際の注意点

慰謝料請求の時効

慰謝料請求権(不法行為による損害賠償請求権)には消滅時効が存在します。
民法724条1号により、「被害者が損害及び加害者を知った時から3年間」で消滅時効により請求できなくなります。

また、不貞の存在や不貞相手を知らなくても、不貞行為の時から「20年」経過した場合も消滅時効により請求できなくなります(724条2号)。

ダブル不倫の場合、事態の複雑さから対応が遅れがちですが、時効にかかってしまう前に法的措置を講じる必要があります。

求償権について

不貞行為は、共同して行われる不法行為であるため、不貞行為に及んだ当事者双方に対して、慰謝料全額の賠償を請求することができます。

ここで注意が必要なのは、配偶者が不貞したが離婚していないというケースでは、配偶者の不貞相手から慰謝料全額の賠償を受けた場合であっても、配偶者の不貞相手が求償権を行使すれば、結果として配偶者が自己の負担部分の支払いをすることとなり、家計からお金が出て行くことがあるということです。

求償権とは、不貞行為に及んだ当事者の一方が、自己の負担割合を超えて慰謝料の支払いをした場合には、他方に対してその超過分を請求することができるものです。

不貞行為に及んだ当事者の間における慰謝料の負担割合は、原則として2分の1ずつとなります。ただし、不貞行為に及んだ当事者間での負担割合については、どちらが不貞を主導したのかなどの事情を踏まえ、2分の1ずつから修正される余地があります。

求償権を行使されると、上記のとおり、家計からお金が出ていく可能性があるため、示談書において、配偶者の不貞相手がこの求償権を放棄する旨の条項を入れておき、求償権の行使を阻止するという手段を講じておくことが考えられます。

ダブル不倫の慰謝料は早い段階で弁護士に相談することをおすすめします

本記事でみたように、ダブル不倫のケースでは、上記で解説したとおり、1つの不貞行為で2つの損害賠償請求権が発生したり、求償の問題が生じたりすることが想定され、法律関係が複雑になりがちです。

また、慰謝料請求をした場合でも、家計単位でみた場合に必ずしも十分な損害の回復が図られるとは限らず、法的な見通しを立てたうえで対応を検討することが大切です。

そのため、早い段階で法律の専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。

大阪法律事務所 所長 弁護士 長田 弘樹
監修:弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長
保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。