
監修弁護士 長田 弘樹弁護士法人ALG&Associates 大阪法律事務所 所長 弁護士
- 団体交渉
合同労組・ユニオンから団体交渉を申し込まれた使用者の方の中には、突然の申し入れに戸惑い、どのように対応すべきか分からず不安を感じている方も少なくありません。
本記事では、合同労組・ユニオンの特徴を踏まえつつ、具体的な対応方法について弁護士がわかりやすく解説いたします。
目次
合同労組・ユニオンの特徴とは?
合同組合・ユニオンは企業内組合と異なり、一定の地域内にいる様々な企業の労働者が、在籍企業の枠を超えて個人で加入する労働組合であるという点に特徴があります。
合同労組・ユニオンとの団体交渉の傾向
合同労組・ユニオンは前述のとおり、在籍企業の枠を超えて個人で加入する労働組合であるため、企業に帰属意識の弱い組合員が多いことから、使用者の信用問題などを気にすることなく過激な団体行動に出ることが多い傾向にあります。
そのため、合同組合・ユニオンとの団体交渉には慎重な対応が求められます。
合同労組・ユニオンは労組法上の労働組合にあたるか?
労組法における「労働組合」とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」(労組法2条本文)をいいます。したがってこれに該当する合同労組・ユニオンは労組法上の労働組合にあたります。
労組法上の労働組合への会社側の対応
労組法上の労働組合でなければ団体交渉を拒否できる?
労働組合法上の労働組合の要件を満たさない団体からの団体交渉については、理論上はこれを拒否することが可能です。もっとも、当該団体が労働組合法上の労働組合に該当するか否かの判断は最終的には裁判所に委ねられるものであり、判断には困難を伴う場合が少なくありません。また、労働組合法上の労働組合からの団体交渉を拒否した場合には、法的・社会的に重大な不利益が生じる可能性があります。
したがって、自らの判断で当該団体を労働組合ではないとして団体交渉を拒否する対応は、慎重であるべきであり、推奨されません。
合同労組・ユニオンからの団体交渉への対応と注意点
団体交渉には誠実に応じる
労働組合には憲法上団体交渉権が保障されており(憲法28条)、これを具体化するために労組法7条2号は正当な理由なく団体交渉を「拒むこと」を禁止しており、これに反した場合、使用者に対しては、民事上の責任のみならず、行政上の責任も発生します。
そして、ここでいう「拒むこと」には、誠実に団体交渉を行わないことも含まれると解釈されています。また、使用者が団体交渉に誠実に応じないことにより激昂した労働者が激烈な団体行動をとった場合、使用者の評判の低下は避けられません。
以上のような法律上・事実上の不利益を避けるためにも、団体交渉には誠実に応じる必要があります。
十分に準備して団体交渉に臨む
団体交渉は、交渉の場ですので当日までに入念な準備が必要です。具体的には、労働組合の要求は何か、労働組合の要求に応じることはできるか、労働組合の要求に応じることができないのであれば、その理由は何か、その理由を基礎づける資料はあるか、といった事項について具体的に検討しておくことが必要です。
相手方の発言にひるまず粘り強く交渉する
使用者が団体交渉に誠実に応じる義務を負っていることは前述のとおりですが、労働組合からの要求に譲歩して合意する義務まで負っているわけではありません。
そのため、労働組合から強い主張があったとしても過度にひるむ必要はなく、使用者側の意見の根拠を示した上で粘り強く交渉することが重要です。
団体交渉の対応を弁護士に依頼するメリット
弁護士が団体交渉の序盤から介入して法的リスクについて助言することにより、団体交渉の対応について事後的に民事上・行政上の責任を問われるリスクを回避することが期待できます。また、団体交渉の激化の原因には、労使間の感情的な対立があることも少なくないことから、弁護士という第三者を代理人として立てることにより、冷静な話し合いが可能となります。
合同労組との団体交渉に関する裁判例
事件の概要
会社が合同組合との関係においてとった一連の対応について、労働組合法上の不当労働行為に当たるとして争われた事案(大阪地裁令和4年(行ウ)第98号・令和5年7月31日)。
裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)
「地域一般労組(コミュニティ・ユニオン)も労働組合である以上、使用者との団体交渉権が認められるのであり、組合が外部団体であることを理由に会社が組合との誠実交渉義務を負わないということはできない。」
ポイント・解説
本件では、ユニオンを「外部団体」とみなし、団体交渉の拒否を正当化しようとした点が主要な争点となりました。これに対して裁判所は、ユニオンも労働組合法上の「労働組合」である以上、団体交渉権を有すると明示し、会社の主張を否定しました。
合同労組・ユニオンからの団体交渉への対応は、交渉のプロである弁護士にお任せ下さい。
合同労組・ユニオンとの団体交渉では、感情的な対立に発展し、冷静な協議が困難となるケースも少なくありません。
こうした場面では、法的知識を有する弁護士が第三者として介入することで、冷静かつ妥当な解決に向けた交渉が可能となります。
団体交渉への対応にお悩みの方は、交渉の専門家である弁護士に一度ご相談いただくことを強くお勧めします。
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保有資格弁護士(大阪弁護士会所属・登録番号:40084)
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